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原マルチノの演説 (筑波大学附属図書館蔵本)
Oratio habita a Fara D. Martino (University of Tsukuba Library copy)
188×127×180㎜ / Ink,paper / silk-screen printing / 2023

1587年、天正遣欧使節の副使原マルチノ(1569-1629年)はインドのゴアで、巡察師アレッサンドロ・ヴァリニャーノ(1539-1606年)への謝辞演説を行った。この演説を収録し、翌年同地で出版した小冊子は『原マルチノの演説』[1]と呼ばれており、日本人の名による初の活字本だと考えられている[2]

制作にあたり、筑波大学附属図書館に所蔵されている貴重な一冊を実見する機会をいただいた。この16ページからなる冊子は、両手に収まるほど薄くて小さい。一見すると簡素だが、紙を透かして見ると、簾の目とウォーターマークの一部が浮かび上がる。また、印刷部分にはインクの滲みやかすれが見られ、紙にはわずかな凹凸が感じられる。これらの痕跡は、印刷機を通じて紙に写し取られた印刷技術者たちの身体の重みを思わせる。

この冊子は、1枚の紙の表裏に8ページずつを印刷し、8つ折りにして真ん中で綴じるシンプルな製本方法が採用されている[3]。本作品では、実物を見た印象や特徴から、紙の素材と製本の過程を作品の造形に反映させることにした。全16ページをモチーフに、8つ折りしたときの左右ページの組み合わせで1枚ずつの作品を構成した[4]

 さらに詳しく見ていくと、テキストの2か所に青みを帯びたインクによる修正跡が見つかった。最初は後の所蔵者による修正かと思ったが、雄松堂書店から出版されているイエズス会ローマ文書館蔵本の影印本[5]にも同じ個所に似た修正跡が見られた。このことから、当時の印刷工による校正の跡かもしれないと考え、作品の該当箇所を青インクで上塗りした。

 

[1] 正確な書名は『Oratio habita a Fara D. Martino Iaponio, suo [et] socioru[m] nomine, cum ab Europa redire[n]t, ad patre[m] Alexa[n]dru[m] Valignanu[m] visitatore[m] Societatis Iesu, Goae in D. Pauli Collegio, pridie Non. Iunij, anno Domini 1587』

[2] 『ベッソン・コレクション 天正少年使節と『原マルチノの演説』 筑波大学附属図書館新館増築記念特別展ワーキング・グループ編、筑波大学附属図書館、1995を参照した。

[3] 同上、p16

[4] 筑波大学附属図書館、貴重書、ベッソンコレクション、資料ID:10079323946、請求記号:198.221-B39 のデジタルデータを参考資料とした。

[5] 『原マルティノの演述』雄松堂書店、1978

​写真:稲口俊太

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